'03.9.14

逮捕

逮捕というのは、裁判所からおりる逮捕状さえあれば簡単に行使できる。
しかもその逮捕状がおりる条件というのもわりと曖昧で、定義としては "罪を犯したと疑うに足りる相当な理由"であり、状況証拠のみでも可能。
極端なことを言ったら、動機があってアリバイがなければ、それに該当するわけだ。

まあ、だからと言って、日々叱られ、コキ使われているお父さんが妻を逮捕しようと裁判所に電話を入れてみたところで、逮捕状がおりることはない。
「DVは最寄りの生活安全課の方に電話してください」と返されるのがオチだ。
逮捕状を請求できるのは検察官、及び司法警察職員(警部以上の階級)のみなのである。

警察機関が一人の人間を逮捕するのは、いとも簡単である。
刑を確定するのは法廷であり、警察はそこまでのサポート業務をしているだけなので、"地検に送るまでの過程"としか考えていない。
容疑者が否認しようと、容疑事実さえ固めてしまえば送検できるわけで、逮捕することにより、自供に追い込めるという確たる自信もあるからだ。

たとえば、あなたが「○月○日×時×分、電車の中で体を触られた」と、見知らぬ女性から訴えられた場合、いくら否認しようと、その電車に乗っていないという証拠を提示できないかぎり、簡単に逮捕される運びとなる。

もっともこの場合は軽犯罪であり、あくまでも"容疑"なので、職場はもちろんのこと、家族にも知られずに同行を求められるケースがほとんどだ。
今の社会の『逮捕=有罪』という見方には警察も重々承知で、相当なる凶悪犯でないかぎり、出勤途中で独りになったときや外出するところを見計らって、周囲の目の触れにくいところで行使されるようだ。

これは先日、実際にあった話である。

某所轄に、とある女性から「夫が何者かから拉致された」と電話があった。
事情を聞いてみると、朝会社へ行く夫をマンションのベランダの上から見送っていたら、そばに駐めてあった車の中からガラの悪そうな男が数名降りてきて、夫を無理やり車の中に押し込めて、連れ去ったと言うのである。

連絡をもらった所轄署に緊張が走った。
事実、最近はそういった事件がやたらと多い。
が、いろいろと調べてみると…

その拉致されたと思われる男は、ある女性から「痴漢をされた」と訴えのあった人物で、その日の朝に任意同行を求め、署に連行したばかりの容疑者だったのだ。

その後、夫人に本当の事情を話したらしいが、妻にとっては、拉致以上のショックだったに違いない。
容疑を認めるまで "拉致"ということにしといた方がよかったような話である。

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