'03.10.12

Standard number

ほとんどがジャズやポップスで占めているのだが、曲の中にはスタンダード・ナンバーと呼ばれるものがある。
音楽ジャンルの呼称とは違い、これを定義するのは難しく、ましてどんなにすぐれた作曲家であろうと、これを意図して作ることはできない。

なぜならスタンダードとは、より多くの優れたシンガーから歌い継がれなければならず、それにかかる歳月が必要不可欠で、音楽業界からスタンダードと認められるのにはジャズ、もしくはオールディーズでなければならないという風潮があるのだ。
たとえいろんなシンガーが歌ってきたとしても、それが一時の流行ソングであった場合、そう呼ばれることはまれなのである。

現在、ビートルズの中にも、スタンダード・ナンバーはいくつかある。
そしてその後の時代――例えば、ポップスならカーペンターズ、ボズ・スキャッグス。ブラックならマーヴィン・ゲイ、スティービー・ワンダー。ロックならイーグルス、クイーンなどと、スタンダードと呼ぶにふさわしい曲は数多く存在する。

カバー時代と言われてもいいぐらいに、今の巷はカバー曲で溢れ返っている。
カバーされた時点で、その曲はスタンダードへの道を歩みはじめる。
やがて消えゆく曲を尻目に、長い歳月を経て、誰からも認められるそれに成長するのだ。

さて、スタンダード・ナンバーの中には「ペッパームーンなら【ナット・キング・コール】」とか「マイ・ファニー・バレンタインなら【チェット・ベイカー】」といった言われ方をするものがある。
もちろんそれは、その曲がいかに個性的で、且つ魅力的に歌われた(演じられた)かによるのだが、そのシンガーのカラーを表わす効果でもあったりする。

そこで、スタンダード・ナンバーの楽しみ方を提供しよう。
「オール・オブ・ユーなら【ビリー・ホリディ】」「デイ・バイ・デイなら【サラ・ボーン】」というふうに決めつけないで、一つの曲を歌ったすべてのシンガーで聴いてみることをお薦めする。
きっと、自分のお気に入りのスタンダードが見つかるはずである。

私が個人的に好きなのは、エラ・フィッツジェナルドの【マック・ザ・ナイフ】や【A列車で行こう】。
ただ、エラの歌う【マイ・ファニー・バレンタイン】は聴きたくない。

スタンダード・ナンバーというのは誰にでも愛される音楽である。
時代を超えて耳にする音楽だ。
だからこそ、人に聴かせるのは非常に難しい。

そう、スタンダードは歌い手を選ぶのである。

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