母のつぶやき

『ただ泣けちゃうこと』

抱っこしてねんねさせていると、時々、あやかは泣き顔になることがある。

眉根を寄せて、悲しそうにも苦しそうにも見える。

夢の中まではどうしてあげることもできず、ただただ、頭を撫でてあげるだけで、切なくなってしまう。

考えれみれば、彼女にとって、お腹から出てくるのは苦しかったに違いない。

寒くもなく、空腹もなくて、おむつも要らない世界から、仮死状態の苦しみを伴って出てきたのだ。

彼女の夢がそのときのことかどうかはわからない。

まだ話すことも、聞くこともできない。

想像でしかないが、どうしようもなくやるせなくなる。

声をあげて泣く自分にびっくりして目を覚ますこともある。

「大丈夫、大丈夫。そばにいてあげるよ」と抱きしめてあげるので精一杯。

時々は楽しい夢を見るのか、声をたてて笑うこともある。

生まれてきて、よかったよ、ってことかな。

それもどうかはわからない。

一緒に笑顔になってしまうから、すごい魔法だと思う。

寝ても、覚めても、彼女が笑顔で過ごせますように、と思わずにはいられない。

これは殆ど恋愛状態かもしれない。

これを「親ばか」っていうのかなーって思いながら、親しかこんなに思えないよなー、とも思う。

泣いたり、笑ったりする寝顔のあやかに、ばぁばが言ってたのを思い出す。

「泣くのは神様がつねってる、笑うのは神様がくすぐってる、みーんな神様のいたずらだよ」