耳より情報(2021年12・2022年1月合併号)
◆ヴァンジ彫刻庭園美術館が「ナビレンズ」で視覚障害者をサポート
静岡県駿東郡長泉町のクレマチスの丘にある「ヴァンジ彫刻庭園美術館」は、障害の有無にかかわらず、すべての人が安心して楽しむことが出来るミュージアムを目指していて、視覚障害者支援ツール「ナビレンズ」を設置しています。
ナビレンズは、情報が埋め込まれたタグ(QRコードに似た四角形のカラーコード)とそれを読み取るアプリからなります。
例えば、施設の壁や柱に情報を登録し印刷したタグを貼っておき、訪れた人はナビレンズのアプリを起動したスマホを宙にかざします。
するとアプリがタグをキャッチし、タグまでの距離や方向など埋め込まれた情報を音声で知らせてくれます。
このタグには情報を6000字まで登録することができるので、観光案内や解説などにも利用されています。
ヴァンジ彫刻庭園美術館では、彫刻作品の周りにあるタグをナビレンズで読み込むと作品のタイトル・時代・解説をスマホで聞くことができます。
そのほか、入口のチケットセンターでタグを読み込むと入館料や開館時間などについて、また、通路のタグを読み込むと作品までの道順について詳しく説明してくれます。
2022年3月29日(火)まで、「すべての ひとに 石が ひつよう 目と、手でふれる世界」展を開催しています。
尚、毎週水曜日、年末年始は休館です。
問い合わせ先:クレマチスの丘総合インフォメーション(電話055−989−8787、休館日を除く10時〜17時)
◆触れて読む・陰影で読む「バリアフリーカレンダー2022」
図版や絵柄の無い真っ白な紙に、浮き出し加工を施された白文字だけのシンプルなデザインの「バリアフリーカレンダー」です。
1年を通して使うものだからこそ飽きのこないシンプルで洗練されたデザインは、2020年に日本文具大賞デザイン部門で優秀賞を受賞していて、点字に触れる機会のない方にも人気です。
浮き出し文字の数字には、公共施設の案内板等で使われる「フォアフィンガー」フォントを採用。触った時の読みやすさと視覚的な美しさを兼ね備えた書体です。
曜日は英語の頭文字で、月は数字と英語の最初の3文字で表されています。祝祭日には点線で下線が引いてあります。
また、毎月の祝日がカレンダーの下部に点字で印刷されています。
オレンジとグレーを組み合わせた、やさしい配色が織りなす美しいコントラストのカラータイプもあります。
白地タイプ・カラータイプ共に大きさは幅25センチ×高さ35センチ、13枚つづりの上下に開く縦長の壁掛けタイプで、税込み価格は3520円です。
付属品として、小冊子「点字のしくみ」が付いています。
問い合わせ先:桜雲会(電話03−5337−7866)、日本点字図書館用具事業課(電話03−3209−0751)
◆視覚障害者向けシール「デコペタシール」
このシールは法政大学経営学部の学生が企画・開発し、大学生の参加する商品企画のコンテスト「Sカレ(Student Innovation College)」で優勝したことにより商品化が決まりました。
「デコペタシール」は、凸点や浮き出た矢印など触ってわかる記号が入ったシールセットです。
シールの大きさは縦約10ミリ、横約20ミリ。
種類は、凸点1個・凸点2個・凸点3個・小さな凸点7個のドット・縦じま・矢印の6種があり、1シートにそれぞれ1枚(矢印のみ2枚)、6種7枚のシールが付いています。
同じ内容のシートが6シート入って1セットです。
6シートのうち3シートは、青いシールに黄色い記号が浮き出ていて見やすいユニバーサルカラーです。
残り3シートは透明ですので、ご自身の見え方や貼る場所に応じて使い分けができます。シートの右端に切り欠きが入っている方が青いシールのシートです。
タッパーや調味料のチューブなど、同じ形をした容器に貼って判別するのに使ったり、家電製品のスイッチに矢印のシールを貼ってどこを押すかわかりやすくしたりなど、工夫次第で様々な使い方ができます。
1セットの価格は税込み550円です。
問い合わせ先:日本点字図書館用具事業課(電話03−3209−0751)
◆メルマガ色鉛筆チーム編著「見えない地球の暮らし方 見えない・見えにくい人のリアルな日常レポート集」
京都府視覚障害者協会では2013年11月から「メルマガ色鉛筆」を創刊し、当事者の声を月2、3回程度、無料で全国にメール配信しています。
見えない見えにくい当事者が、日常の中の一コマをあるがままにレポートしています。
その中からセレクトした40レポートを収録し、見え方・見えにくさの体験カラーページやイラストなども加え、「見えない地球の暮らし方 見えない・見えにくい人のリアルな日常レポート集」として今年5月に発行されました。
京都府視覚障害者協会のホームページ(http://kyosikyo.sakura.ne.jp)から収録されたレポートを読むことができます。
アマゾンのキンドルと楽天のコボでは、電子書籍として無料で入手できるようになりました。
また、サピエではテキストデイジー版がダウンロードできます。点字データと音声デイジーは現在制作中です。
収録レポート一覧:http://kyosikyo.sakura.ne.jp/contents/read/id/458
視覚障害者向けテキストデータ版:
http://kyosikyo.sakura.ne.jp/uploads/contents/451/mienaichikyunokurashikata-textdata.txt
「メルマガ色鉛筆」申し込み方法:
http://kyosikyo.sakura.ne.jp/contents/read/id/47
◆「触ってわかる歯の模型」を全国の視覚特別支援学校や障害者歯科に
大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部と歯科技工士学校が共同して、視覚障害のある方にも等しく歯の情報を伝えるため「触ってわかる歯の模型」を作り、全国の視覚特別支援学校や障害者歯科に届けようと寄付を呼び掛けています。
2016年、視覚障害者の歯磨き指導に役立ててほしいと、通常の2倍の大きさの歯の模型を作りました。
模型は2017年度のグッドデザイン賞を受賞し、大阪府内の一部の視覚支援学校で実際に歯磨き指導に活用されています。
一般的な模型では小さすぎて歯や歯茎の境目がわかりにくいことから、この模型は縦・横・高さが通常の2倍の大きさで、大人用、子ども用、生えかけの3セットを用意。
歯は歯茎部分に固定せず磁石でくっつけるため、歯を動かして患者の歯並びを再現でき、「この歯は前に出ているから、歯ブラシを縦にして磨かないといけない」などと伝えやすくなります。
歯並びの悪い箇所や親知らずなども再現でき、模型を触って自分の口の中をイメージすることができます。
課題は価格で、通常の模型は3万円以下ですが、阪大の模型は10万円ほどかかるため普及しませんでした。
そこで阪大はクラウドファンディングで支援を募り、歯模型を全国の視覚特別支援学校や障害者歯科、視覚障害者支援団体に届けるプロジェクトを立ち上げました。
第一目標の400万円は達成し、視覚支援学校30校と障害者歯科のある大学病院10施設に子ども用と大人用の歯模型セットを届けました。
最終目標の1200万円が達成すれば、全国の視覚支援学校や歯科病院、視覚障害者支援団体など計約120カ所に模型を寄贈することができます。
寄付募集は12月24日(金)の23時まで。
詳細はクラウドファンディングサイト「READYFOR(レディーフォー)」内の専用サイト(https://readyfor.jp/projects/handai-hamokei)でご確認下さい。
ご支援方法がわからない方は、お電話でお問い合わせ下さい。
問い合わせ先:阪大推進センター(電話06−6879−2228、担当・平井さん、平日9時〜16時)、最初に「歯の模型の係に」とお伝えください。留守の場合は留守番電話に伝言を残すと、追って連絡があります。
◆「眼の障害」の障害認定基準が一部改正
10月29日付で、厚生労働省より日本年金機構に対して、国民年金・厚生年金保険障害認定基準の一部改正に関する各種通知が発出されました。
この一部改正は、平成30年7月に身体障害者手帳(視覚障害)の認定基準が改定されたことを受け、障害年金の障害認定基準を見直すものです。
障害年金の障害認定基準は、令和4年1月1日から一部改正されることになりました。
今回の改正では、視力障害の認定基準は良い方の眼の視力に応じて適正に評価できるよう、「両眼の視力の和」から「良い方の眼の視力」による認定基準に変更。
視野障害の認定基準は、これまでのゴールドマン型視野計に基づく認定基準に加えて、現在広く普及している自動視野計に基づく認定基準も創設。求心性視野狭窄や輪状暗点といった症状による限定をやめて、測定数値により障害等級を認定するよう変更されます。
また、自動視野計の導入に伴い、ゴールドマン型視野計に基づく認定基準の整理を行い、視野障害をより総合的に評価できるよう、視野障害についても1級及び3級の認定基準を規定。
尚、今回の改正によって障害等級が上がる場合がありますが、障害等級が下がることはありません。
該当者には日本年金機構から個別に通知されます。通知には拡大文字と点字が同封されていて、封筒には音声コードが印刷されています。
詳しくは、お近くの年金事務所や年金相談センターまでお問い合わせください。
今月の耳より情報は以上です。
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