'05.2.3

Tsubo-Niwa(坪庭)

日本庭園と言ったら、みなさんは何をイメージされるだろうか。大きな池があって、そこに何匹もの錦鯉が泳いでいる。手入れの行き届いた梅の木にウグイスがとまり、ホーホケキョと声を鳴らす。静寂の中に、ししおどしの音がコーンと響き渡る。そう、これらはすべて和を感じる日本庭園の要素にほかならない。ただ日本庭園というのは、遠く足を運ばなければ見ることのできない景勝を、限られた空間の中に収めた単なる人造物であることも否定できない。

もともと日本庭園には、敷地の中に実際の山や谷を形成する築山(つきやま)、池や滝を利用して自然美を追求した池泉(ちせん)のような自然造形型と、石や砂を利用して山や大海、川流れを表現した枯山水(かれさんすい)とが存在する。築山や池泉が純粋に景勝を楽しむものだとしたら、枯山水の場合はそれらを空想に置くことによって、禅の境地に立とうとする狙いもあったりする。


のちに、茶の湯を楽しむための茶庭(露地)も誕生するが、これは茶道に従じて(踏み石や手水鉢は必須)庭に“侘びさび”をもたせたものだ。特に茶庭は幽邃な境地を好み、華やかなものは好まれていない。苔庭と呼ばれるのも侘びさびの象徴で、茶庭から生まれたものである。もっともその規模から考えると(茶室まで行くアプローチに過ぎないので)、大掛かりな回遊式ではその定義から外れてしまうわけだが。

さて、タイトルの坪庭である。これに関してはよく“1坪ほどの小さなスペースにつくられた庭”と観られがちだが、実際の語源は坪ではなく壷。壷というのは古くは女性的な意味を持ち、もともとこの庭が屋外というよりも母屋に属したところから家内=女性、壷庭と言われるようになったという説と、“壷=へそ”という意味合いから、母屋のへその部分の庭=壷庭になった説がある。
要するに坪庭に関しては様式などなく、建物内のちょっとしたスペースに自分流の景勝を持ち込めば、すべて坪庭と呼んでいいわけである。当然、そのスタイルが洋式であろうと坪庭と呼べる。
ただ、やはり今の時代で呼ばれる坪庭は、京都の町屋に見られるものがスタンダードと言えるだろう。縦長な民家の奥に配する庭で、もともと明かりとりや風通しのために設けられたことから、大自然のごとく樹木を生い茂らせるには日当たりが足りず、大きな池を掘るにはスペースが足らずと、スタイル的には茶庭から派生した枯山水が主流となっている。

ここで、ブリティッシュな香りを残しつつもLA風味なBar-Chandlerの店主がなぜ坪庭なの? と不思議がる方も少なくないだろう。
実を言うと私、なんとか庭の大改造ができないものかと2年ほど前から日本庭園についてのうんちくを学び、なんと近日にマイ坪庭なるものを完成させてしまったのだ。もちろん、そのためのデザイン、設計もすべて自ら。
こうなるとプロデューサー魂に火がついて、施工から完成までをも休日利用で独自で仕上げてしまった。石などの重量物の搬入や垣根のベースづくりは専門家にお願いしたが、ほとんどの資材を自ら買い集め、手づくりで完成させた。俗に言うDIYというやつだ。
みなさんには実物を見てもらえなくて残念だが、解説なるページを写真入りで設けてみたので、興味ある方は是非ご覧になっていただきたい。
Bar-Chanの庭

まあ、結局は自慢話になってしまったが、これをアートと観るか、単なる道楽趣味と観るかはお客さまのセンス次第。ツボにハマってくれる方が多いことを祈りつつ、今回のコラムを締めたいと思ふ。いとおかし。

以上

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