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白い箱の中は・・・

春                                          フランスのお金持ち、ピエール・サヴォワがル・コルビュジェに依頼して1931年に完成した「白い箱」のような家は、写真でたびたび目にしていたものの、中はどうなっているのか。 それを見に出かけた。

パリからRER・A線でポワシーPoissyに行く。
ポワシー市はセーヌ川のほとりにあり、サヴォワ氏は週末用の別荘をセーヌ川を見下ろす丘に建てた。

Villa Saboyeポワシーは感じの良い小さな街で、サヴォワ邸までのバス乗り場は親切な人たちのおかげで、すぐにわかった。駅前のターミナルを出ると、バスはすぐに商店街を抜け、のどかな風景の中を進んでゆく。 7つ目の停留所でバスを降りると、すぐにVilla Savoyeのサインがある。

入り口に見たような白い家。エーッ、こんなに小さかったの?と思ったのは早とちり。これは守衛所であった。が、この守衛所は物語が始まる前にあらすじを読むように、すでにサヴォワ邸のテーマを伝えている。

植え込みの間の迂回する道を進むと、広い芝生の真ん中に細い柱で支えられ、まるで宙に浮いたような「白い箱」が出現する。

Villa Savoye

近づくと、2階の横長のガラス窓に木立が映り込んで、冷たくも見える四角い箱に有機的な動きを感じさせるのだった。柱の並ぶ空間はせり出した2階部分の下に当たり、建物の周りがぐるりと軒下になっている。その軒下を、正面のちょうど裏側に位置する玄関まで回っていくと、まず深いグリーンの壁が現れ、次にガラスの壁が曲線になって玄関ドアへと続いている。 この曲線と建物の周りの地面は、1930年当時のリムジンがハンドルを切って進みやすい寸法に決められたそうだ。

窓

明るい玄関ホールの奥には2階へ続くゆったりとした傾斜のスロープが延びていて、手前には、これも2階へと続く螺旋階段が垂直に立っている。

2階はサヴォワ家の生活空間になっており、天井から足下までの大きなガラス窓からふんだんに入る光に満ちあふれた広い居間が、その中心にある。
ガラス窓の外は屋上庭園が広がり、開放感にあふれている。真っ白い空間の奥の壁一面は柔らかいコーラルピンク。振り向くと、入り口側の壁一面はベビーブルー。
つまり、かなり横長に広いリビングルームの両端の壁はピンクとブルーに相対していることになる。この暖色と寒色は、建物の白い空間全体の中に明度や彩度を変えながら繰り返し現れる。


リビングルームと息子たちの部屋をつなぐ廊下の壁は鮮やかな青。
息子たちの部屋はオレンジ。
婦人の居間は廊下と同じ青。
夫妻の寝室はコーラルピンク。

コーラルピンク ブルー

螺旋階段これらの色が白い空間の中で壁の一面だけ、あるいは白い壁を一面残して部屋全体に、施されている。ドア枠や階段の手すり、スロープの床などに使われる暗いグレーが白、ピンク、ブルーの色彩を引き締めている。

これらの色彩は「明るい時間」という別名を持つ建物に、生き生きとした表情を与えているのだが、実はこの色彩、度重なる修復工事の際にはその度に議論が重ねられたようだ。現在、私たちが目にする色彩は、建築当時の白黒写真の明度と各要素のコントラスト、ル・コルビュジェ本人が監督を務めた最初の修復工事の際の詳細な記録、壁の調査、そしてル・コルビュジェのカラーサンプルで決定されている。

 


青い壁廊下と婦人の居間に使われた鮮やかな青は「ブルーシャロン」という色であることも、カラーサンプルからわかっている。2階には屋上庭園があり、婦人の青い部屋とリビングルームがこの庭園に面して配置されている。庭園からも建物内部からも3階の庭園に上がることができる。スロープを使えば無意識に、螺旋階段を使えば意志を持って素早く、1階から2階、3階まで上れ、上に上るたび、角を曲がるたび、印象的な色彩と、違う景色が広がって来る。

今も魅力的なこの建物だが、今から約80年前には、ほとんど住む家という概念からはほど遠かったであろう。いくら施主のサヴォワ氏が全く既成概念にとらわれなかったとしても、住み心地はあまり良くなかったらしい。
ピュリスムを提唱したル・コルビュジェが、12年ほどにわたる芸術運動の最後に到達した、彼の表現の総てともいえるのこの別荘も、やがて使われなくなり、納屋のような使い方しかしていなかった時さえあったらしい。
どうも建築家の理想と現実の生活は永遠のテーマのようだ。

いずれにしても、その後の紆余曲折を経て、大切に保存され21世紀の私たちに残されたことは幸せなことだ。この「白い箱」の中を巡ることは、現代アートの生まれた時代を立体的に体感することなのだから。


参考文献 ル・コルビュジエのヴィラ・サヴォワ 公式ガイド
ル・コルビュジエの公式サイトはこちらから

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