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MEMORANDUM-陶房雑記帳2013年6月

■八ヶ岳の「煙の木」

八ヶ岳ロイヤルホテル(山梨県北杜市大泉町)のすぐ前にあるカフェテラス「煙の木」に立ち寄りました。シンボルツリーの「煙の木」がカフェの入り口に植えられている小さな店です。
 季節になると糸状の花が伸びて煙が立ち上るような雰囲気になるのでこの名前があるようです。花が咲いた姿が霞のように見えるので「霞の木」ともいうようです。欧州南部・ヒマラヤ・中国南部が原産地とのこと。本来、花の季節は6月7月ころということなのですが、今回は花が見られなかったのが残念。
 コーヒーを注文したら、いかにも手づくり風の練り込み作りのカップに入って出てきました。
 「練り込み」とは、色や濃淡の異なる粘土を練り合わせたり、貼り合わせたり、交互に積み上げるなどして作った模様の粘土を使い成形する技法をいいます。波模様などの予期しない柄や市松文様などの幾何的な表現を楽しめる焼物です。
 店はご夫婦で経営しているようで、カップなどの食器類は奥さんの手作り作品とのこと。ご主人も陶芸の本場、岐阜県中津川の出身。しばらく陶芸の話などに花が咲きました。
 裏庭にはウッドデッキテラス席もあり気軽に高原の空気を楽しめる雰囲気で、コーヒーも美味しい。
 ちょっと午後のコーヒーのつもりで立ち寄ったのですが、食事メニューを見ると、飛騨牛と高原野菜のスープシチューや手作りハンバーグのトマト煮などが美味しそうなので、結局夕飯もこの店を予約してひとまず外出。  予約した夕飯の時間になって再訪すると、注文していない山菜のてんぷらや凍み大根の煮つけ、サラダなどが皿に盛られていました。
 うどの芽やたらの芽などを私たちのために近くの山で採ってきてくれたようだ。さっそくビールとワインを注文して山菜をつまみに始める。都会では季節の山野菜などもスーパーで簡単に買えるのだが、やはり山から直接採ってきたばかりの新鮮なものは香りもよいし旨い。華やかな雰囲気もリッチな感じもないが、ご夫婦のもてなしの気持ちと家庭的な雰囲気を味わえる楽しい晩めしどきとなりました。(2013.6.16)


■陶を彫る

今年の正月、ジョホールバル(マレーシア)の市内を歩いていたとき、住宅の壁を飾っているランの花のレリーフが印象的だったのでカメラに収めて家に帰りました。
 その後出かけた出光美術館でも古代ギリシャやエジプトのレリーフ美術を見て、何となく彫る作業に興味を持つようになりました。
 石や陶、木材などを彫る技術(レリーフ)は西洋美術では古くから知られ、古代ギリシャの神殿やヒンドゥ教寺院などでよく見られるいわば古典的な表現方法です。
 中国陶磁器では景徳鎮の代表的な表現方法となったインチン(影青)も彫って表現します。彫った後に釉薬が流れて影の様に青く焼きあがることからこの名前ができたようです。また、彫るのではなく貼り付ける方法は貼花(ちょうか)と呼ばれ、その代表格としてはウエッジウッドのジャスパーウエアーがあります。
 ワインクーラーを轆轤でひいてその側面にジョホールバルで見たランの花を彫ってみました。削る・彫るタイミングは粘土の乾き具合で変わってくるし、ねんどの種類(荒い・細かいなど)によっても雰囲気が変わってきます。
 柔らかなイメージを出したかったので、素焼きの後に花の部分に薄く下絵具を塗って、更に白マット釉をスプレーで薄くかけて焼きました。
 これまでに文字を彫ったことは何度かあるのですが、絵を彫ることはほとんどなかったので私にとっての陶レリーフ第一号試作品です。
 いろいろと今後の課題が“浮き彫り”にされたレリーフ第一作です。彫った後の光と影で作品の印象が変わってくるわけですから、彫の深さと彫った角の部分の鋭さ(あるいは滑らかさ)が大切のような気がします。つまり光と影を予測しながら彫ることが大切です。今後もときどきは“彫る楽しさ”を体験しようと思っています。(2013.6.1)


神奈川県藤沢市高倉815-2
(小田急線長後駅東口徒歩7分)