羽田から7時間飛ぶとインドネシアの首都ジャカルタに着きます。ジャカルタ空港で国内便に乗り換えて更に1時間半飛ぶと、息子夫婦と孫たちが住んでいるスマランという町に着きます。地図で見るとジャワ島のほぼ中央でジャワ海に面した町です。
いま、息子の家のテラスからスマランの町を眺めています。街並みの上はるか遠くにはジャワ海が光っています。テラスでのんびり私が味わっているのは息子の嫁さんがいれてくれたジャワコーヒー。麝香猫(ジャコウネコ)の糞の中で醗酵したコーヒー豆だけからつくるというユピ・ルワク(kopi-luwak・インドネシア語)という珍しいコーヒーです。
ときどきどこからか“アザーン”の響きが聞こえてきます。ちょっと物悲しい情緒ある調べです。最初聞いた時にはコーランを唱えている声だとばかり思っていたのですが、流れてくる調べは正確には“アザーン”と呼ばれるものだそうです。
テラスから眺めるスマランの町→
周辺に住むムスリム(イスラム教徒)たちに一日に何度か礼拝の時間を教え、アラー(神)は偉大だから礼拝をしなさいよ、コーランを唱えなさいよ、という呼びかけの声だそうです。アザーンは右のほうから聞こえてきたかと思うと次は左のほうから聞こえてきたり、また正面から聞こえてきたり、どうやら音声が届く範囲五か所くらいから拡声器を通して流れてくるようです。
インドネシアは世界一のイスラム教徒を抱える国、人口の75%がイスラム教徒ということです。言葉も文化も違う300ほどの民族が集まった国なので、イスラム教徒といっても民族性や地域性により、またそれぞれの家庭により、その信仰の強さ・深さはかなり異なるとのこと。
テラスから眺められる風景の中にはモスクのよう建物は見つかりませんが、それぞれの民家の中にもお祈りする決められた場所があるのだろうと思います。住民の生活に密着したイスラム教を感じます。アザーンの響きは、毎日住んでいる異教徒たちからはうるさいと思える時もあるようですが、初めて訪れた旅人にとっては情緒ある、心揺さぶられる響きでした。(2017.12.20)
その昔、中国桂林で骨董屋を始めた友人から、新しい陶磁器類を古く見せる技術を教えてもらったことがあります。何やら薬につけて土の中にしばらく埋めておく、というようなことだったと思いだします。
中国の骨董屋は北京・上海・広州・杭州・蘇州などずいぶん歩き、青花(染付)の鉢や小さな水差し、皿などを旅の記念にいくつか持っていますが、本物かどうかはわかりません。ある人によると(場所と店にもよるでしょうが・・・)90%は偽物だということです。
しかし、真贋があいまいでも本物と思ってその焼物が作られた時代を想像するのは何となく楽しいものがありロマンを感じます。
私はこの数年、古いペルシャやシルクロードの焼き物の雰囲気を再現したいと思い製作を続けています。
私の理想は焼き上げて窯から出して手に持って眺めたときに、古い遺跡や砂漠の砂の中から掘り出してきたような雰囲気がある、というものです。
そのために私は焼成方法で工夫をしています。
例えば、トルコブルーは白土で成型した作品に釉薬をかけて窯に入れ、酸化焼成(空気を十分窯内に送り込んで完全燃焼させる)すると、明るくきれいなブルーが期待できるわけです。
しかし、私の場合はトルコブルーの釉薬を使う場合も、白土に20%程度赤土をブレンドして、軽く還元(窯内に送る空気の量を少なくして煙突から少し煙が出るように焼く)をかけて焼いています。
トルコブルーの焼き方としては邪道であると思っているのですが、焼き上がりに変化が出て、“深みのある年代を感じさせるブルー”が表現できると思っているわけです。
さて、ここまで書いてきてふと自問自答しています。
なぜ、新しく綺麗なものより、古くて薄汚れたものが良いのだろう?
その答えは、ロマンを感じるから、何となく年期を感じるから、いぶし銀のような重厚さを感じるから、などなどいろいろありますが、結局は自己満足なのでしょう。食器だとしたら綺麗な方がよいに決まっていますから。(2017.12.20)
神奈川県藤沢市高倉815-2
(小田急線長後駅東口徒歩7分)