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SPECIAL REPORT−旅の記録

■中国・宜興を訪ねて/2007年9月


2007922日から25日まで、家族で中国杭洲・上海34日の旅をしました。そのとき杭州からそれほど遠くないところに、茶陶の産地として有名な「宜興」(中国語で「イーシン」と読む・正確には、江蘇省宜興市)があることを知りました。
 杭洲に2泊、一日目は市内観光で西湖の近くの古い町並みをぶらぶら歩いたり、仏塔に登って西湖を一望し、湖のほとりにある毛沢東の別荘跡などを眺めたりのんびりしました。
                 仏塔からの西湖の眺め→

    杭洲での2日目は「宜興」を訪れました。高速道路を走って約2時間半のドライブ。宜興は観光地として有名な太湖の西岸に位置しています。地図で見るとちょうど太湖の反対側に無錫があります。
    宜興は、「紫砂」という茶器などに適した赤土に恵まれ、近くで生産される龍井茶向けの茶器・急須などを中心製品として栄えてきた「陶都」です。(磁器で栄えた景徳鎮が「磁都」といわれているのに対して、陶器で栄えた宜興は「陶都」と呼ばれています。)
 特産の「紫砂」という粘土で作られた茶器は最高の茶道具として珍重されているとのことで、台湾においては紫砂により製作された茶器がブームになって高値を呼んだときもあるようです。作品の雰囲気は日本の常滑焼(愛知県)や万古焼(三重県)と良く似ていると思います。中国茶における茶道具として発展してきたので、日本においても煎茶界では珍重されてきたようです。
 茶器以外にも生活雑器、土管・煉瓦・瓦・大甕(かめ)などを製作し、中国全土のみならず海外からのバイヤーにも対応しているとのことでした。
 
山から採取してきた陶石を砕いて粘土を作る職人の作業場に立ち寄りました。恐らく大規模な砕石工場もあるのでしょうが、私たちが訪問したところは本当に個人の作業場というような薄暗い場所でした。

                  粘土を作る職人→

 陶器を販売している店が並んでいる一角があります。どの店に入っても“急須だらけ”という感じ。精巧な創りのものもありますがほとんどは石膏型から造ったいわゆる“型造り”の大量生産品でした。
  現在では良質の紫砂土の原料が少なくなってきて、いわゆる“作家もの”と呼ばれる手作り品は高値になってごく一部になってしまったとのことです。


  実は後述の「景徳鎮紀行」でもちょっと触れるのですが、みやげ物として急須などを買った店の陶工が、こっそりと「紫砂土」を10kgほどビニール袋に包んでくれました。スーツケースの中に忍ばせて無事税関を通過できたので、日本に帰ってさっそく焼いたら今まで使っていた赤土とはまったく違う深い焼き味になりビックリ喜んだことがあります。
                  記念に買った鉢と急須→


  そんな中、プロの工房のひとつ、宜興市紫砂工芸廠・山霊楽楽陶舎の陶芸家呉東元さんを訪問しました。呉さんの案内で成型作業、削り作業などの製作現場や作品展示場を見学しましたが、大勢の陶工を使って比較的大規模に生産している工場でした。

山霊楽楽陶舎の陶芸家・呉東元さんと

     茶器を作る陶工→











 
 古い登り窯も訪ねました。詳しい資料や説明書はありませんでしたが、恐らく明時代の窯跡だとおもいます。
                  宜興の古い登り窯→

  今回の宜興への旅は、駆け足旅行だったので肝心の宜興陶瓷博物館に立ち寄ることは出来ませんでした。
  上海へ移動する最後の日は中国茶の産地「龍井村」(中国語で「ロンジン」と読む)を訪問。杭洲の中心地から約30分、茶畑のある山間の丘陵地帯にありました。坂道に沿って茶畑が続く。ところどころに茶店があり旅人たちに自慢の龍井茶や食事を出す。われわれは茶畑の麓にある竹林の中の茶店で昼食をとりました。のどかで優雅な場所でした。
2011.3記)
      


神奈川県藤沢市高倉815-2
(小田急線長後駅東口徒歩7分)