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MEMORANDUM-陶房雑記帳2014年6月

■懐かしい九州の民窯

日本民芸館で開催されている「九州の陶磁展」を観てきました。
 九州の陶磁器は朝鮮陶磁の影響を受けながらも、当時の日本の社会的背景の中で独自の発展をしています。
 その一つは薩摩、黒田、鍋島、細川などの各藩主のバックアップを受けながら製作された茶道具や上級階級のための陶磁器、そしてオランダの東インド会社を経由して海外へ輸出され有名になった華やかな有田焼など。
 もう一つは陶工たちがこつこつと轆轤を回して作った生活に密着した日常雑器。まさに日本民芸館のコレクションは生活の器・庶民の用の美に拘っているものです。
 今回の展示は伊万里(佐賀)・唐津(佐賀)・小代(熊本)・小鹿田(大分)・薩摩(鹿児島)・種子島(鹿児島)などの民窯で焼かれた生活の器で、ほとんどは日本民芸館の創設者である柳宗悦(1889-1961)によって蒐集されたものとのこと。
 私はこれまでに、有田(伊万里)、唐津、小鹿田、薩摩、等を旅して九州の窯場と陶磁器はほとんど見てきたつもりでいたのですが、まだまだ未訪問の窯場が多く旅に出かけたい誘惑にかられています。
 若いころ日田温泉に泊まって小鹿田を訪ねたときの水車と唐臼の音、そして登り窯の風景は懐かしく脳裏に焼き付いています。唐臼は山から採ってきた土を20日―30日くらいかけて粉砕するための臼で、その動力源が伝統的な水車ということになります。

   「飛び鉋」で有名な小鹿田焼の壺

 唐津焼は中里太郎右衛門窯くらいしか知らないのですが、唐津武雄で焼かれた二彩唐津が今回の展示では印象的でした。一般的に知られている唐津焼は鉄絵(弁柄や鬼板などの鉄分を多く含んだ顔料で描く文様)だけの一彩ですが、二彩唐津とは鉄絵と緑彩で大胆かつおおらかに描かれた絵唐津です。
 種子島焼は行ったことがないのでぜひ訪問したい。南蛮焼締めの重厚な土味が魅力的な窯場です。九州民窯への旅、夢は膨らむばかりです。
 注:伊万里焼とは佐賀県有田町を中心に焼かれた焼物・つまり有田焼で、伊万里港から全国に出荷されるようになってから、伊万里焼とも呼ばれるようになった。(2014.6.20)

■My骨壷・プロトタイプNo.1

生前に“墓”を用意しておくと長生きする、という話がありますが、私は勝手に生前に“骨壷”を用意しておくと長生きする、と思っています。(当ホームページ「陶房雑記帳」2011年8月参照)
 葬儀屋に詳しい友人に頼んで本物の骨壷を見せてもらったりして、標準的な寸法などもひかえてあるのですが、どうも一般の骨壺は造形的に面白くない。100円ショップにあるような容器の中で永眠するのも味気ない。有田焼のような装飾が付いた高価なものもあるのですが、何となくありきたりでつまらない。
 とは言うもののなかなかアイデアが浮かばず創造意欲がわいてこない。そんな折、偶然訪問した上野の東京国立博物館東洋館に展示してあった韓国の古い骨壷が面白くそれに倣って形を作ってみました。遅ればせながらその第一号品が焼きあがりましたので、ここに紹介しておきます。
 蓋は外蓋で雨風に当たっても水気が中に入りにくい構造にしてあります。 見たこともないような美しい花々が咲き誇る草原に横たわって、シルクロードの楽師たちが奏でる調べを聞きながらうとうとと眠る。空には美しい天女がゆったりと舞っている。
 そんなイメージ(私自身の希望)で絵を描き焼いたのですが・・・以下、反省です。
 花や人物の絵がちょっと暗くなってしまった。特に輪郭に使った弁柄(べんがら)の線が太く出すぎてしまった。全体に土味が出すぎて“渋い花園”になってしまった。還元焼きが強すぎたのかもしれない。
 また、天女の羽衣が重い感じになってしまった。もっと風に流れるような羽衣にしなければ。
 既に友人のMさんからはご注文をいただいており、蓋の部分にマーガレットの花を描いてほしい、というご要望もあります。
 先日床屋に行ったついでに駅前の花屋を覗いたらマーガレットの鉢植えがあったので一鉢買ってスケッチしました。菊科の花ですが細長く春菊のように分かれた葉が特徴的です。
 Mさんが長生きしたのち楽しく永眠できるように、さわやかにマーガレットを描きたいと思っています。(2014.6.6)

神奈川県藤沢市高倉815-2
(小田急線長後駅東口徒歩7分)