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MEMORANDUM-陶房雑記帳2015年11月

■アンバランスの美

私は茶碗や鉢などを作るときは、通常電動ろくろ(轆轤)を使っているのですが、ときどき手ろくろを使ってちょっと“手作り風”の器などを作ります。
 また、ちょっと大きめの鉢などをろくろで挽くときには、ろくろと手びねりをミックスした方法で作るようにしています。特に絵を描く鉢などは、まん丸に作るよりも少し変形させたほうが何となく趣が出て絵が生きてくるかなと思っています。
 例えば、3kgくらいの粘土を使って電動ろくろで鉢を作る。そのまま半日くらい置いて作品の辺縁部が少し乾いたころに、今度は2kgくらいの粘土をひも状にして積み上げてゆき意識的に円形の周辺部分を少し変形させる、という作り方です。結果として何となく素朴な雰囲気が表現できて描く絵も生きてくるような気がします。
 ろくろは基本ですがすべてではない。ろくろ成形は陶芸の基本ですが陶芸家でもろくろを使わないという人は結構多いようです。
 陶芸好きの人たちにはろくろを使った同心円の機械的な表現より、手びねりでの素朴な温かみのある表現を望んでいる方が多いようです。
 ゆがんだ円のほうが趣がある。何故なんだろう?

                手びねりの鉢

 日本の伝統的な文化には、完璧に真ん丸、完璧に左右対称、というよりも、少し不完全なところ、アンバランスなところに美を見出そうとする美意識があるようです。
 例えば、茶道におけるもてなしの心は、少し足りない方がよい、足りないことにより客は親しみを覚え、暖かみを憶える、ということです。従って茶道具ではゆがんだフォルムに鮮やかな緑釉を施し自由奔放な文様を入れた織部などが珍重されることになります。
 生け花でも左右のバランスを崩して自然を表現する、ということがあるようです。原則として左右対称に行けるフラワーアレンジメントとの違いは“バランスを崩してバランスをとる”ことにある、という話しを聞いたことがあります。(2015.11.30)


■高倉陶房の栗鼠

高倉陶房のある藤沢市北部郊外は都市化が進み1986年にこの地に住み始めたころに比べると、庭を訪れる鳥や小動物もめっきり少なくなっています。(陶房雑記帳2013年8月「高倉陶房の蛇」参照)
 自然の風情が少しずつ身の回りから少なくなってゆくことは寂しい限りですが、今年の秋になってから栗鼠(りす)らしい小動物が庭木をよじ登っていくのを見た、と草取りをしていた家内から話がありました。
 初めて聞いたときは半信半疑だったのですが、数日後に私が外出するとき庭に目をやると、落ち葉の間から木の枝を駆け上る鼠色の物体を目撃しました。確かに栗鼠です。この庭で栗鼠を見かけるのはこの地に住んでから初めてのことです。
 実は10月初めころに何回か隣の林(高倉憩いの森)の茂みの上の方から、「カッ、カッ、カッ、」というような聞きなれない声がすることがあり、最初はカラスの声かなと思っていたのですが、今回の栗鼠の出現で調べたところ声の主は栗鼠と判明しました。栗鼠は空をむいて威嚇するときにカラスのような声を出すということです。
 おそらく鎌倉山や片瀬山に生息していたのが移り住んできたのでしょうが、このあたりにまでくるということは、よほど食糧事情(木の実など)や住宅事情が悪くなってきたのか?と思っていたら、どうやら繁殖しすぎて生息地域を拡大しているようです。
 湘南地方に生息している栗鼠は、一説によるともともと江の島の植物園で飼われていた台湾リスが1951年(昭和26年)に台風で壊れた檻から逃げ出して自然繁殖したもの、ということです。

          栗鼠(りす)はどこに?

 陶房の庭、そして隣の高倉憩いの森にはどんぐりをはじめ栗鼠の餌になるような木の実がたくさんあります。かわいい栗鼠が住み着いて増えてくれればいいな、と今は思っているのですが・・・、鎌倉に住んでいる友人の話しでは結構いたずらもするらしい。増えすぎて相当な被害も出ているようで、鎌倉市では駆除対策も講じているとのことですが、増殖の方が早いようで苦慮しているようです。
 高倉陶房のあたりは梨や葡萄を作る農家も多いので、どんぐりを食べるかわいい栗鼠とばかり言っていられなくなりそうです。(2015.11.5)


神奈川県藤沢市高倉815-2
(小田急線長後駅東口徒歩7分)