公募展、つまり公に募集される作品展です。
私的団体による公募展から県展や日展などもあります。
私は陶芸を始めて10年ほどたった若いころには、藤沢市の公募展(市展)に毎年応募していました。そのころは陶芸が面白くて何でも作って夢中になって、自分の作品に客観的な評価が欲しかったのだと思います。たしか三年続けて出展したのですが、うち2回入賞しました。
当時の記録を調べると、最初に受賞したのは釣窯釉をかけた鉢(1992年の藤沢市展)で、次に入賞したのは「むべ」の実を描いた陶皿(1993年藤沢市展)でした。
この二つの作品は私の陶歴の原点になるものですので、今も大切に家の中に飾ってあります。
しかし、公募展で他の人の作品と比較され、ランク付けされるということになると、どうも複雑な気持ちになります。自分の楽しみ、喜びのために自由に作っている陶芸作品が、自分とは異なる尺度で評価されることが嫌になるわけです。もちろん陶芸を「生業」として生活してゆくためには公募展や個展などでの実績評価の積み重ねが大きな価値になるのでしょうが。
親しくしていた画廊のご主人が県展に出しなさいよ、と勧めてくれた時期もあったのですが、私の作陶は「賞をとる」ことを目的にしているわけでもないし、純な気持ちで自分の目標に向かって作陶できればよいではないか・・・、という考えもあって、私は藤沢市展での2回の受賞を最後に公募展への出展をやめてしまいました。
むべ(左1993年作・右2016年作)→
実は、先月、毎年恒例となった藤沢三田会アート展に「むべ」の実を描いた大鉢を出展しました。
1993年(23年前)に製作した「むべ」と比較すると・・・、自己評価では、作品としては上手になっている、しかし、陶芸作品としての魅力は?
複雑な思いで二つの「むべ」を見比べています。(2016.7.17)
花瓶に蝶を描いたら、花に集まる蝶のように生けた花と調和してくれるのでは、という単純な発想でいくつか花瓶を作り、蝶を描いてみました。(『陶房雑記帳2016年4月』参照)
そのうちのひとつ、アオスジアゲハを描いて炭化焼(※)したものが割合面白く焼けました。(※炭化焼とは、窯の中に「さや鉢」という耐火粘土製の容器を入れて、その容器の中で作品を炭と一緒に焼くものです。作品はさやの中で炭と一緒に強還元状態で焼かれることになり、結果的に炭の不完全燃焼煙が作品に吸着され、表面が墨色になったり、炎の流れが赤茶色に残ったりと予期せぬ変化を見せてくれることがあります。)
花瓶の表面に描いた蝶は、墨色の煙の中で見え隠れしている状態となり、”夜の蝶”の雰囲気になるわけです。
その作品を見た友人が、速水御舟(※)の作品(炎舞)に似ている、言ってくれました。(※速水御舟の有名な作品は、夜の炎に集まる「蛾」を描いたものです。)私には速水御舟の炎舞など全く頭になかったのですが、大家の絵に似ているとはまことに光栄なことです。
同じく数年前、中国敦煌の旅から帰って敦煌の砂漠を旅する駱駝を壷や皿に描いたときには、平山郁夫の物真似では・・・と言われたこともあります。友人たちと鳴沙山の砂漠でラクダに乗りミニキャラバンを体験して、その風景を描いたのですが、先人の有名な作品があると、なかなかオリジナリティーを出すのは難しくなってしまいます。
以上の二つは、真似しようと思っていなかったが、結果として似てしまった、という例です。
2020年東京オリンピックのエンブレムは、当初決定されたものがベルギーの劇場のロゴと似ているということで問題となり、廃案となる事件がありましたが、盗作なのか単にアイデアが類似してしまったのか?
作者の真意を測ることはできませんが、トップクラスのデザイナーたちが一つのテーマに向かって考え抜いて、結果的に類似したものになってしまう、ということもあリ得るのではと思うようになりました。
何となくデザイナーの気持ちが分からないでもない!というところです。(2016.7.17)
神奈川県藤沢市高倉815-2
(小田急線長後駅東口徒歩7分)